副指揮者・阿部未来さん

今年度、去年の4月から神奈川フィルの副指揮者に就任された阿部未来さん。
みんなからは未来ちゃんと呼ばれ、多くの団員に信頼されている31歳の若者。
副指揮者の制度が出来てから伊藤翔くん、永峰くん、そして阿部くんと3代目の副指揮者。
本当に素晴らしい若者ばかりで僕は3人とも凄く好きなんだよね。

未来ちゃんは東京音大を出てドレスデンに5年ほど勉強に行き帰ってきた。
就任前からいろんな話をしたし、本当に音楽を愛し大事にしていて、僕にとって今はいなくては困る存在。
オーケストラの仕事には様々な仕事があり、そのほぼ全ての公演ごとにリハーサルから本番まで必ず未来ちゃんはいる。彼はバランスをチェックしてくれたり、音楽的にどうしたら良いのかを正直に言ってくれる。
それは音程、フレーズの感じからハーモニーの変遷でのバスラインの作り方まで聴いてもらって感想を全て言ってもらっている。

とあるソリストや指揮者が世の中でブレイクしているのに、僕にはどうしても何も胸に来る物がなくてブレイクの理由がわからない、とこぼすと、それを凄く論理的に説いてくれて慰めてくれていて、ある意味愚痴を聞いてもらっている状況すらある。それが僕の意見に適当に「そうですよねー」と言うのではなく、「わかります。それは僕も思っておりますが、、、」と話し出す内容には説得力もある。
僕が50年かかって確信した事、或は(多分こうした方が良いだろうな)と思う事、多くの指揮者に言われて自分自身考え尽くして出た答えも彼は全て何故それがそれで良いのかをあっさり言葉にして説明してくれる。
実技の先生でありメンタルをコントロールしてくれるもはやなくてはならない人。
言ってみればコーチ的な存在。
なんでその31歳の若さでそこまで色んな事をわかっているんだろう?
凄いね。

下野さんからこの制度が出来た時に言われた事がある。
「僕が大阪フィルハーモニーの副指揮者時代に本当に多くの団員から様々な事を教えてもらったから、是非彼らにいろんな事を話してやってください。そのおかげで今指揮者としてやっていられるんだと思うんです」と。

最初はこの副指揮者のポストから成長してどんどん世の中に出て行って、素敵な音楽家になって欲しいな、そして素晴らしい指揮者になって戻ってきてこのオケを振って欲しいなんてと思っていたけれど、今は彼らから僕は教えられ、育てられている。
最近では未来ちゃんが
「いつかひろやすも成長してどんどん世の中に出て行って素敵な音楽家になって欲しいな」と思っているぐらいだと思う。

いつの間にか未来ちゃんがいる間にいろんな事聞いておこうなんて思っている自分もいる。


この未来ちゃんと同世代のオーケストラのメンバーが中堅になって来た頃、前回のブログで書かせてもらった今の高校生の素晴らしい人達が入団してくれたらと想像すると、わくわくするよ。
妄想はほどほどにして現実を見よう。

とにかくまた良いアドバイスを未来ちゃんや川瀬さんからもらい、もう少し成長したいんだよ。
もう少しぐらいは成長できると思うし、そう信じたい。

20歳も年下の若者に教えてもらえる、こんなラッキーな事はないよ。