トリプル・コンチェルト

ベートーベンの3重協奏曲、みなとみらいホールとミューザ川崎での2回の演奏会が終了した。
無事になんとか終了できたのも、コンマスの崎谷くんや、副指揮者の阿部くんの助言や励まし、常任指揮者の川瀬さんを始めとするオーケストラのみんなの協力、そして多くの来て下さったお客様に支えられてのおかげだと思っている。
心から感謝したい。


演奏会で僕にとってとても大切な事は、人様の前でしか起こらない事、人様の前で演奏しないと感じない事があるという事なんだと思う。これは僕の宝物。
それらは、すべて自分にとって反省する事がほとんど。
今回の様に同じプログラムを2日間演奏出来る時は、その反省を2日目にどうにか生かしたいと思う事なんだよね。。
たった1日で修正できる事なんか微々たるもんだと思う。
微々たる物でもそれを修正しようと血眼になる。
でも正直、微々たるものでも簡単に修正なんか出来ない。
それが実力なのだから。


でも変えられる事が1つだけある。
それは「意識」。
どんなコンサートでもガタブルに緊張してるし緊張しない演奏会なんてある筈もない。
今回の1日目も2日目だって、そのガタブル度合いはなんら変わらない。
とにかく1日目より2日目の方が上手くなるなんて事はあり得ないし、変えられたのは「意識」だけ。
それでもその意識を変えようとチャレンジした事は良かった。


昔からぼんやり思っていた事ではあるけど、ベートーベンという偉大な山を登るには、いろんなルートがあるんだとは思う。でもやはり登って行く為には同じ言語を有する人と登らないと登山もままならない。
幸いおぼつかなくても僕が使う言語が指揮者の川瀬さんやコンサートマスターの崎谷さんが話す言語が近かった為に本当に色々助けてもらった。
2日目は「ひろやすさんの使う言語はわかっています。全く通じていますから。僕らも語り続けますから」という言葉に意識を変える事ができた。仲間って有り難いな。


この3月で定年退職されるバイオリンの女性がいらっしゃる。
その方に、とにかくこの年齢の僕がもがいて必死になっている姿を見てもらえただけで嬉しく思っている。それは、あなたが定年までずっと頑張って来た事を引き継いでいますよという証明になると信じてるから。
そして、それを見ているもっと若い方々が今の僕の年齢になった時に「そういえばひろやすはこの頃必死にもがいてたな。僕も1つもがいてみるか」と思って頂けたら僕がこのオーケストラで働いていた意味にようやくなるんだと思う。


昨日家に帰ったら、聴きに来てくれた親友からとてつもない長文の感想が送られて来ていた。
僕がわかっていながら直していない事、直せない事、全く気付いてもいなかった癖等々、少しの褒め言葉、全て僕の演奏を把握しての感想は本当に嬉しかったし、次へのモチベーションになった。

恵まれているよね。僕は。
すべての方にこの場を借りて感謝申し上げたい。