シューマンのチェロ協奏曲

11日の日、東京音楽コンクールの弦楽器部門の優勝者の水野さんと管楽器部門の優勝者で神奈川フィルの同僚の鈴木さんの演奏を聴く為に上野の東京文化会館の大ホールに出掛けた。

水野さんは今現在17歳で高校3年生。
2年前の学生コンクールで優勝したり、去年の日本音楽コンクールでも3位に入賞するなど、もはや立派なチェロ奏者。
その彼が今回シューマンのチェロ協奏曲を演奏すると言う事でとても楽しみだった。
およそ30年前、僕もコンクールの本選会で同じ曲を演奏した。
それ以来、オーケストラで伴奏したのも2回程だし、ソロを弾いたのもコンクールの時と合わせて2回しかない。なかなか演奏されない名曲であり、難曲。

そのシューマンを17歳の彼は素晴らしく弾き切った。
伸びやかで歌曲の作曲家としても有名なシューマンを見事に歌いこなしていた。
驚愕だった。
しかも、今の高校3年生は水野さんの他にも本当に素晴らしいチェリストが沢山いる。
もちろん、この学年だけではない。
素晴らしい学生が今は本当に沢山いる。
若い人の多くは僕がコンクールに出た頃と比べると数段レベルも高く、弾けない曲はないのではないかと思う程立派にどんな曲も弾きこなす。
今後のチェロ界は心配ないどころか、本当に10年後、20年後が楽しみで仕方がない。


管楽器部門の優勝者の鈴木さんは3年前に神奈川フィルの首席ファゴット奏者として入団した若き勉強家。
これは声を大にして言いたいのだけれど、オーケストラで働きながらコンクールに出場して、さらには優勝をすると言うのは本当に恐ろしく大変な事。
憲法を変える事の方が簡単じゃないかと思うぐらいの大変さ。
まぁ改憲か護憲かは全く別の話しとして。
次から次へとオーケストラでは新たなプログラムがやって来て、その練習もおろそかに出来ない中、コンクールの曲を別に練習する事がどれぐらい大変な事か。想像してみて頂きたい。
しかも鈴木さんはオーケストラの仕事を当然の事ながらおろそかにする事などある筈もなく、リハーサルを毎回録音してそれを聴き直してまた練習するという超がつく勉強家。
そして今回はフランセの協奏曲を演奏していたけれど、これまた大変な難曲。
いつこんな曲を練習したんだよ!と思う程の曲だったし素晴らしかった。
そして忘れてはならないのが神奈川フィルのファゴットの大先輩であり同僚の石井さん。石井さんは鈴木さんがいい状態でコンクールが受けられる様に出番や降り番を調整したりと、若手がどんどん成長して行く事に尽力する素敵な先輩。そういう素敵な先輩に恵まれた鈴木さんは幸せだと思う。
僕もそんな石井さんを尊敬している。
なかなか出来る事じゃないんだよね。


こんな若い二人の演奏を聴き、芸大でレッスンがあったのでコンサートは全部聴く事なく失礼したけれど、今度はその芸大の生徒さん達の弾くチェロを聴いて、また刺激を受けた。
みんな相当努力してるんだよね。
本当に一生懸命勉強してるんだよね。

体調が悪い、肩が痛くて弾けない、風邪から来る中耳炎で耳が聞こえない、と最近は何かと都合良く言い訳が目の前にある事を良い事に、ダラダラと練習している僕だったけど、凄く彼らに刺激をもらったし、自分の学生時代一心不乱に練習してた事を思い出し、今の自分を恥じた1日となった。

若い人がマジになって勉強する姿は美しくかっこいい。
舞台に立てば50歳も17歳も全く関係ないんだよな。
彼らの様にがむしゃらにならなきゃ。
そして心から音楽を楽しまなきゃ。

そんな事を心から思えたとても良い1日だった。