2月26日

今年50歳になる。
学生時代、50歳或は50歳台の先生や大先輩方を見てとてつもなく遠い年齢の方々だと思っていた。
それがいつの間にか僕もその域に入る事になる。
かといって、その時の先生方の「素晴らしい演奏の域」に入った訳でもない。
それが一番焦る事なんだよなぁ。
努力をしなかった訳でもないけれど、足りなかったのか?
もう少しこうすれば良かったとか、色々と残念に思う事も当然ながらあるけれど、これは失敗の例として生徒さんや後輩にその失敗を伝えなきゃな。
いつまでたっても僕には先輩や先生、素晴らしい演奏家の教えがまだ必要。
いつになったら真っすぐ歩けるんだろうと年齢を重ねるほど落ち込む材料になる。


宗次ホールの方から2月26日にリサイタルをしないかと言って頂き、色々と考えたのだけれど、初心に戻りバッハを弾く事にした。
でもバッハだけの演奏会はこれからも出来ると思うし、何か出来ないかと考えていた所、原田禎夫さんとのデュオが出来たらと突如思い立ち、禎夫さんにお電話させて頂いた。
奇跡的に彼のスケジュールは空いていた。
しかも日本にいると言う。
東京カルテット時代はアメリカに居を構え、今もドイツに住んで忙しい毎日を送っていらっしゃる。
その原田禎夫さんがスケジュールは空いていて日本にいるという奇跡と幸運には驚愕したし興奮するほど嬉しかった。
そして禎夫さんに
「前半バッハを弾こうと思うのですが、後半でデュオをやって頂けませんか?」と聞いてみると、
「俺はやりたい事しかもうしないよ、喜んで行くよ。リハーサルも何日もできると思うし。しかもギャラなんていらないからな」
と。
ギャラなんていらないなんて、そんな事は出来ないけれど、そんな禎夫さんの言葉に本当に励まされたし、心から感謝した。
そういう大人になりたいと思った。
もう大人だけどね、十分。

と言う訳で

プログラムは
前半
バッハ
無伴奏チェロ組曲第1番・第3番

後半
ソッリマ
「ザ・シューティング」(デュオ)
バッハ
無伴奏チェロ組曲第4番(デュオ)

と言う事になる。
50歳にもなってまだまだ大先輩の力を借りないといけない訳だけれど、
禎夫さんから盗み取った物を、今度は僕が生徒さんや後輩に伝えないと。
禎夫さんには当然遠く及ばないけれど、一緒に弾かせてもらうだけの準備は死にものぐるいでしたい。
その前にトリプル・コンチェルトがあるからその練習も始めてはいるけれど、実は来月に向けてすでにお腹が痛い。