無謀な僕

中学の頃、知り合いの方から「ロンジン」というメーカーの自動巻の時計を海外のお土産として頂いた日から、僕はこの小さな腕時計の中にある見えない宇宙に取り憑かれすっかり腕時計に魅せられてしまいました。そして細々と仕事は始めた頃から少しのお金が貯まるとそのお金を頭金にして、機械式腕時計を買っていました。僕のゴルフよりも長く深い趣味、それは機械式腕時計です。自慢ではありませんが、今まで結構高価な時計を買って来ました。でもだいたいローンが返済されてから次を買っていますので、信用と安心の健全経営です。何年か前にパネライというメーカーの自動巻時計を買って、もうこれで打ち止めだなと思っていました。ところが、再び今度は手巻きの「これぞパネライ」というもう生産中止になる時計を買ってしまったのでした。もちろん後悔はありませんが、本当にお金がない今、無謀な男です。
でもそれを眺めながら、7月22日まで続く大変な日々を乗り越えようと思っています。昨日の夜から今日の昼間にかけてほぼ徹夜で、今度は至って真面目なプログラム・ノートを書いている時もそのパネライの時計を側に置き、原稿を書いていました。明日は名古屋でヴィルトーゾ・シンフォニー・オーケストラの本番です。そして明後日は再びピアノトリオのリハーサル。7月4日はついにその演奏会です。めっちゃいいコンサートになる予感。
でも、バッハの無伴奏チェロ組曲を録音した一昨年から去年の秋に首を故障して弾けなくなるまで、そしてその後、復帰して今回また首を故障するまで、だいたいスケジュールが無謀。それに比べたら同じ時計のメーカーを買う事ぐらい、大したことではないぞ。
今も時計を目の前に置きながら、無謀なスケジュールをなんとか頑張って乗り切ろうと心に決めた無謀な僕でした。

でもこの美しさ、見て頂きたい。