こだわり

街では
「こだわりのスープ」
「こだわりの豆腐」
「魂の串焼き」
「天然ダシの京風うどん」
などと言う看板を見かける。
それを疑うつもりは全くない。何か、僕にはわからない店主ならではのこだわりがあるんだろう。しかし何か釈然としないのは僕だけ?


楽家に当てはめてみようか。

×月○日、山本裕康チェロリサイタル in △ホール

「こだわりのソの音から繰り出される」
バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番
「学生時代から20年、丹誠込めて練り上げた」
ベートーベン チェロソナタ第3番

最高の状態で演奏する為、20分の休憩後、

「なんとロシアから取り寄せた楽譜を使用! 取り寄せに3ヶ月を要した」
ショスターコービッチ チェロソナタ


こんなところだろうか。

もちろんプロと言われる人達は圧倒的に時間をかけて準備するだろうし、聴きに来て下さる方々には気付いてもらえない様な所まで悩み抜く。それをコンサートで言う事は正直ないと思う。

自分が作るコンサートではあえてプロフィールも独自の物を作っている。
どこどこを首席で卒業とか、コンクールで何位とか、それよりも今、この時間を耳で楽しんで頂きたい。そう思う。


でもあの星の数ほどあるチラシから何か目にとまる様なチラシを作ろうと思っている事が、そもそも「こだわりの〜」に繋がるのかも知れないけど。

口コミ等でじんわりと「裕康って知ってる?聴いた方がいいよ」とアンダーグラウンドで話題になる音楽家になりたい。