宗次ホール

CoCo壱番屋」の創業者である宗次さんが建てた素晴らしい響きのホールが名古屋の栄のど真ん中にある。
客席数は310席。
室内楽にもリサイタルにも最適な空間。
過去に何度も宗次ホールでは演奏させて頂いた。
今回は「四季の日」という宗次さんがとにかく一年に一度クラシックを聴いてみませんかと始めたコンサート。
宗次さんの結婚記念日でもあり、当時すり切れる程聴いたという「四季」を毎年いろんな方がソリストとして登場して昼、夜と2回の公演があるコンサートだ。


その少し前に宗次さんが社会貢献をする為に資金が必要と言う事でCoCo壱番屋の株を売却したことでもニュースになったけど、本当に頭が下がる。
若い音楽家に楽器を貸与したり、ホールを建てたり、地味な活動かもしれないけどあの宗次ホールの一帯を早朝から毎日掃除をしておられる。
そういう理想は僕も描く事だけは出来るけど、それを実行する事との差は天と地以上のものがあると思う。


一代で築いたCoCo壱番屋ではあるけれど、53歳の時にあっさり引退して、経営にもタッチもせず、社会貢献活動をずっと続けていらっしゃる。
そんなホールで弾く事は音楽家としても光栄きわまりない。
個人的にも宗次さんには大変お世話になっているし、神奈川フィルが苦境に立たされた時も援助の手を差し伸べて下さった。
本当に足を向けて寝れない。


1966年生まれの僕だけど、来年の2月に50歳を迎える。
その誕生日の日に宗次ホールさんの特別企画としてリサイタルをさせて頂く事になった。
いろいろどんな曲を弾こうかとも考えたけれど、40歳になった時に再びちゃんとバッハを勉強しようとした様に、50歳最初の日のコンサートはやはりバッハで始めようと思い、バッハの1番と3番を演奏する事に決めた。
後半は僕のみならず多くの音楽家が憧れる元東京カルテットのチェロ奏者である原田禎夫さんをゲストに来て頂き、チェロのデュオを演奏する計画になっている。
わざわざ敬愛する禎夫さんと一緒に弾ける事はこの上ない幸せだし、身に余る光栄だ。


そして、僕を愛知県の春日井市名古屋市に住んでいた頃からお世話になった方々には是非聴いて頂きたいし、応援を頂いた方々に、感謝する場にしたいと思う。
僕が音楽家として成功したか失敗したかはわからない。
正直これは本当にわからない。それは正直どうでも良い事なのかもしれない。
でも、ここまで音楽家として生きて来れたのは数えきれない程多くの方の支えがあっての事。
50歳という節目にあのような理念の宗次さんが建てたホールで、僕が目指す大人像を地で行く世界の原田禎夫さんと共演するという「これからの人生もお前ちゃんとやれよ」と叱咤激励のコンサートになると思うし、とにかく多くの方に感謝しながら練習はしたいし、コンサートでもその想いを持って臨みたい。