嬉しい2日間

8月10日、20代の若いプレイヤーから誘われて、室内楽のコンサートに参加した。
よくよく考えれば、上の世代の方から誘って頂いたり、同年代のプレイヤーに誘ってもらって室内楽を演奏する事がほとんどだった。
もちろん、オーケストラの業務として若いプレイヤーと室内楽を演奏した事はあるけれど、自主のコンサートに誘ってもらって演奏したのは初めてじゃないかと思う。

誘われた時、正直もの凄く嬉しかった。
嬉しい理由はいくつもあるけれど、僕がずっと目指して来た演奏家像としてはどんな世代のプレイヤーからも「一度は一緒に弾きたいチェリスト」とになる事だったから。
20歳以上も離れたプレイヤーから誘われると言う事は僕のチェロに少しは興味があると言う事だったんだろうし、それは光栄な事だった。
10年年齢が違えば教育も違うし、話題も違う。もっと言えば冗談の笑うポイントすら違う。
20年違うともはや異次元とはいかないにしても、相当なギャップがある筈だ。
それでも彼らは僕を誘ってくれた。嬉しかったな。ホントに。
その中でメンデルスゾーンのカルテット2番とメンデルスゾーンの8重奏曲を演奏した。
カルテットの方はかなりの練習回数がとれたし、充実したリハーサルだった。
若いプレイヤーが考えてる事、出そうとする音、全て刺激的でもあったし、彼らは僕の好みも聞いてくれて実践してくれた。
あまり自分の関わった演奏会を「良かった」と思う事もないし、いつも反省したり落ち込む事が多いけれど、
今回の演奏会は僕は本当にいいコンサートだったと自分が参加しながら恥ずかしげもなく言う事が出来る。
僕は著名なソリストでもないし、東京カルテットの原田禎夫さんの様に室内楽を極めた男でもない。
純然たるオーケストラプレイヤーに声をかけてくれた彼らに敬意を表したいし、感謝したい。

これから彼らの世代は確実に音楽界を引っ張っていく存在になるだろう。
そしてまた多くのもっと若い世代の人に影響を与えていって欲しいと思う。
また機会があったら誘って欲しいし、僕もどんどん彼らの音楽を知って吸収したいと思っている。


その前日、京都で京響定期演奏会があり、現田さん指揮でブラームスのドイツレクイエムを演奏した。
この定期演奏会の後、東京で若いプレイヤーとのリハーサルがあったので終了早々にホールを後にしたけれど、
その直前に現田さんに挨拶に伺ったら
「ひろやす、ありがとう!おまえはホントに凄いやつだな、ホントにいてくれてありがたかった、凄いわ。ありがとう、感謝するよ」
とおっしゃった。
決してお客様にはわからないオーケストラのチェロの首席としての仕事を褒めて下さったんだと思うけれど、
どんなソロがうまく弾けるより、オーケストラの仕事を評価してくれた事は僕も本当に嬉しく、これからももっとオーケストラの首席奏者としての誰にもわからないような細部に渡っての仕事を磨こうと改めて思った。
そのドイツレクイエムのソリストには74歳の吉江忠男先生が務めたけれど、あまりに素晴らしく、感動した。
吉江先生にも僕は若い頃本当にお世話になったし、その先生がまだまだ全然一線級で素晴らしいバリトンを聴かせてくれた事も本当に僕を奮い立たせた。

この2日間の本当に素敵な想い出を持って、今日松本に向かう。