日本音楽コンクール

今年の日本音楽コンクールは第83回。
僕が受けた時は第56回だったから、思えば遠くに来たものだ。


今回、この歴史ある日本音楽コンクールのチェロ部門の審査をさせて頂いている。
心から光栄だと思う反面、その重圧は半端ではない。


40数名がチャレンジした1次予選と12名が進んだ2次予選が終わり、10月29日のファイナルラウンドを残すのみとなった。
僕がこのいわゆる「音コン」を受けた時に比べて課題曲の難易度は相当上がった。
それを1次予選2次予選と全ての参加者は弾き切った事は本当に凄い事だと思った。
感心している場合ではないよ、ホントに。


今年のこのコンクールが始まるまであと1ヶ月という頃から、チャレンジする皆さんの緊張に近いぐらい僕も緊張していた。
責任を果たすという事がどういう事なのか、本当に悩んだし、考え込んだりしてた。
点数の付け方もわからず、審査をされる方々に相談をする事も出来ず、悶々としていたし、
なにせ、僕がコンクールを受けた時に審査をして頂いた先生方、そう、もはやチェロ界の重鎮の方々も多くいらっしゃる中でどうやって僕は点数を付けたらいいのか、本当に悩んだ。


考え抜いた挙げ句、ちゃんと誰に見せても納得をしてもらえる様に項目別での絶対評価という事にした。
その内容は書けないけれど、このコンクールを受けた方全ての人が「何故、この点数なのですか?」と聞かれても全ての項目の点数についての理由も書き、納得して頂ける様にして挑んでみた。

それでも難しかった。
時折(自分と比べてどうなんだ?)と思ってしまう事もあるし、すぐ前に弾いた人との比較を行いたくなる衝動もある。
そしてやはり、他の先生方と大きく違ったらどうしよう?という恐怖もなかった訳ではない。
でも新参者なりの信念を持って審査をさせて頂いた。

2次予選は大曲であるR・シュトラウスブラームスの2番、ベートーベンの3番のソナタからの選択だった。
僕も何人もの師匠から叩き込まれた様に、ソナタ室内楽だ。
室内楽としてどのようにこの偉大な楽曲を仕上げているのかを判断するのは本当に幸せでもあり、難しかった。

とは言え、このコンクールにチャレンジした全ての若いチェリスト達、素晴らしかった。
それを知れただけでも刺激にもなったし、勉強にもなった。
その素晴らしいチェリスト達の中から4人の若者がファイナルラウンドに進んだ。
その中に高校生が3人もいる。
是非聴いて頂きたいと思う。
10月29日、東京オペラシティ・コンサートホール、17時開演。

そして、僕がコンクールを受けた時審査員だった亡くなられた師匠は、あの孤独な舞台で弾く僕をどういう目で見つめていたんだろう?どういう想いで聴いていたのだろう?
予選が全て終わってから、ずっとそんな事を考えている。