現代国語の先生

高校1年の時、現代国語の先生はY先生と言った。
先生は当時某大学の大学院生で、非常勤講師だった。
当時から本が好きだった事もあり、先生と色々話しをしているうちに先生が
「来年からは松本の高校の先生になるから最後に飯でも食べに行こう」とご飯を誘ってくれた。
その食事の時に小説の話や作家の話を聞き、本当に楽しかった記憶は未だに忘れられない。
大曽根にあったお店だったな。


次の年の高校2年の時、松本のY先生のお宅に夏休みを利用して遊びに伺った事がある。
その時に先生はチェロを持ってこい、「酒飲みコンサート」を開催するからとおっしゃった。
「酒飲みコンサート」と言っても、先生のお宅で先生はギターを弾き、奥様は歌を歌い、そして僕がチェロを弾くという物だったけど、なんだか楽しかった。
その時に、Y先生の友人でやはり教師であるH先生も誘っていた。
H先生は東京の超有名音楽大学のバイオリン科を卒業された方だった。
そのH先生に東京と言う街、音楽大学という物、そして卒業後何をして稼いでいたかなど、ホントに多くの話しを聞かせてもらったな。
当時は体育大学を目指していて、音楽大学など受けるという発想さえなかった頃だから、大変刺激的な話しだった。


話しを最近に戻す。

22日の日に「松本室内合奏団」というオーケストラを指揮する機会に恵まれた事は前回のブログで書かせてもらった。
そのコンサートの事をY先生夫妻に電話した所、ご夫妻でいらしてくださった。
サイトウキネンの時もお蕎麦をごちそうになったり、いろんなお土産を頂いたり、毎年ではないものの、松本に行くと時々お会いする付き合いをさせて頂いていた事もあり、懐かしさはなかったけれど、
やっぱり高校時代からの僕を知る方とお会いするのは嬉しいものだ。
そのY先生が終演後楽屋に訪ねて来て下さりおっしゃった。
「ねえ、Hに会ったよ。偶然もあるんだな」と。
僕は最初何をおっしゃっているのかわからず「Hさんですか?どちらのHさんですか」と聞き返した。
先生は「『あの酒飲みコンサート』のバイオリンのHだよ」と言うではないか。
30年前の記憶が一瞬にして蘇り「あぁぁぁ、H先生ですか、聴きにいらっしゃってたんですか?」と聞くとY先生は「は?バイオリン弾いてたじゃんかよ、こっちも気付いてなかったか」と。

呆然となるとはこの事。

僕は知らなかった。
そしてY先生に聞くと、H先生もあの時のチェロを持ってころころ太った眼鏡の僕と、偉そうに指揮をしていた22日の僕が同一人物だと言う事に全く気付かなかったそうだ。
慌てて探したが、H先生はもう帰られた後だった。
大変失礼な事をしたものだ。


しかしながらこんな偶然があるんだ。


でもやはり出会い、縁は大切にしないといけないと思った。
日本は狭いし、音楽の世界はもっと狭い。


現代国語を教えてくれた先生からしてみれば、僕は全く関係ない仕事に就いたけど、
こうやって先生とつながっている事は嬉しい事だし、また色んな思い出話を蕎麦を食べながら、そして先生はお酒を飲みながら、語り合う日を楽しみにしている。