キャンセル

明日栃木でリサイタルがある。
何年か前にとある友人のチェリスト急病の為にピンチヒッターとして伺ったのがその主催される方やお客様との初めての出会いだった。
そしてまた呼んで下さった。
ありがたい話だし感謝してる。


あれは本当に熱い夏だったな。
熱くて倒れそうなぐらいの日の夜に電話が。
「明後日、空いてますか?」と。
予定はあったけど、ずらしてもらえたら空いてると答えたら
「リサイタルをお願いします」と。
曲目を自分のプログラムに変えても良いのであれば、と答えて引き受けた事を記憶してる。


病気や怪我、それは演奏家であれば誰しもが苦しむ事。
もちろんほとんどの人は無理をしてでもその演奏会で弾こうとするだろう。
調子が悪く叩かれても、「体調が悪くて」「身体のここに激痛が走って」なんて良い訳も出来ない。
言い訳する理由がないのよね。「だったら弾くなよ」で終わるだけなんだから。
それでも演奏家は演奏会を弾こうとする。
キャンセルっていう事はもうどうしようもない時だけなんだと思う。
その時もよほどの事なんだろうと思ったし、事実大変そうだった。
僕もキャンセルした事がある。
ずいぶんこのブログでも世の中的にも叩かれましたね。

そのキャンセルして全く仕事をしてない時に母親を亡くした事もあり、
仮病で母親を看病したのか、とか、お前はいいよなキャンセル出来て、とか。
まあ散々言われました。
辛かったね。2重に。
母の葬儀の時もシャツが着れないぐらいの首の痛さだったからなぁ。

最近では友人が尿管結石で動く事も出来ず、救急車で運ばれて入院しても、まだ次の日からのオーケストラのリハーサルに出ようとしていた。マーラーの9番でそれは無理だろと思ったし、凄く心配だった。


今回の栃木で弾かせて頂くリサイタルはそんな友人のキャンセルから始まった縁だけど、そんな事を思い出しながら明日向かおうと思う。
そして珍しく、バッハを弾かないリサイタルになる。
僕には珍しい事
無伴奏は弾くけど、バッハは弾かない。
そんな事より、明日キャンセルしないようにまずは気をつけないと。