ドン・キホーテ

もう10日も前になるけど、新名古屋交響楽団ドン・キホーテを演奏させて頂いた。
そのオーケストラとは2年前にもドボルザークを弾かせて頂いており、2度目の共演。


去年から先月弾いたブラームスのドッペルコンチェルト、そしてこのドン・キホーテ、そして今月演奏会があるドボルザークのコンチェルトと僕の許容範囲を超えたスケジュールに本当に苦しんできた。
そのうちの3分の2が終わった。


オーケストラ奏者として、そして時には室内楽やソロを演奏する僕は俗にいうソリストではない。
その僕がコンチェルト、もしくはそれに準ずる曲を一ヶ月のうちに3曲弾くという事はチャレンジにも程がある。
風車に叩き付けられ、ずぶ濡れになり、羊の大群に戦いを挑みと、まさしくこの数ヶ月はドン・キホーテの人生のようだった。
とは言え、こんな機会に恵まれた事に感謝するし、その感謝の仕方は僕なりに最大限以上(そんな言葉はあるのか?)練習するしかなかった。
演奏がどうであったかは色んな意見があるだろうし、僕が判断することではない。

でも一つ今回の演奏会で大きな発見があった。

ドン・キホーテの登場の部分、そこが僕が初めてあの曲中で音を出す所、自分で言うのもなんだけど、
力む事なく、家で或は楽屋で弾いている感覚に近い感じでスタートをきれたような気がする。
それもお客様からみればどうお感じになったかは別として。
そしてビオラのサンチョパンサのソロへと移る。
ビオラ桐朋学園の同級生であり、都響の時は同僚で今は押しも押されぬソリストとして活躍する川本さん。
彼女の集中力の高さ、そして表現力の豊かさや幅、音のスピード感や音楽の大きさを舞台上で聴き、僕は感動もしたし。我に返って正直ひるんだ。
そして次にドン・キホーテが出てくる部分で微妙に力んだ。
でも自画自賛をさせて頂くと、曲に挑む事は当たり前だけど「彼女にこの場で挑んだところでどうもならん」と思い、すぐに修正出来た事は僕には収穫だったし、ほんの少し成長があったのかなと思う。

つまりメンタルによって大きく演奏が変わってしまう事を目の前で発見した。

今までも緊張する事は当たり前だし、メンタルは大事だと思ってはいたけど、これほど如実に音に影響する自分を自分で気付けた事が幸せな事だった。

そしてこの曲は正確にはチェロコンチェルトではなく、交響詩だ。
長くオーケストラをやってきて、オーケストラの人間としてこの曲をとらえて演奏出来たのは良かった。
今回で3回目だったけど、前の2回はその中途半端な気持ちがなんか一歩踏み出せない演奏になってしまったからだ。
オーケストラの人間が、交響詩を弾く、その強い想いが今回そういう事を発見させてくれたのかもしれない。

それにしても川本さん。
訳あってほとんどの音楽家が彼女を「イネコ」と呼ぶ。
イネコの素晴らしさは会場に来て下さった方々には十分堪能して頂いたと思うし、新名響の皆さんを違う次元に連れて行った彼女のビオラやその舞台での表現や立ち居振る舞いには凄いと感心したし、感動した。

そのドン・キホーテのコンサートに小学校、中学校での同級生が20人ほど来てくれた。
卒業して以来会っていなかった故郷の大事な仲間。
そしてコンサート後、プチ同窓会を開いてくれた。
この事はまた次に書こうと思う。

イネコ、指揮の井崎さん、そしてもはや良き友人として迎え入れてくれた新名響の方々に心より感謝したい。