昨夜の定期演奏会

現田さん指揮、ヴァイオリン三浦文彰さんでベートーベンのヴァイオリン協奏曲が前半にあった。
とてつもなく素晴らしい曲である事は疑う余地もないけれど、
それを素晴らしい曲だと言う事を証明するような演奏は、凄い事なんだと思う。
ヴィルトゥーゾ的な曲もなんの問題もなく弾きこなす文彰くんではあるし、凄いテクニックだといつも思ってはいたけど、実は、静かにベートーベンを語る様に演奏できる事こそ本当のテクニックなんだという事を教えてもらった気がする。


演奏会後、もはや当たり前になったお客様のお見送りの時に若い方が杖をついて僕の所までやってきて「長い間身体を壊していて、ようやく今日コンサートに来れました。コンサートに来れるまでになりました」とおっしゃった。
大変な闘病をなさって、ついにコンサートに来れるまでになったと、まだ辛そうではあったもののコンサートホールまで来て頂いた事への感謝と、その方の想いを想像したら涙が出て止まらなかった。
最後にその方はこうも言った。
「定期会員だと言うのに、ずっとコンサートに来れずに申し訳ないです」と。

24時間経過した今でもその彼の姿と声が頭から離れない。
なんの為に僕はチェロを弾いているのか、
なんの為にオケをやっているのか、
僕の仕事って何?
ずっと考えている。

音楽を必要とする方がいる限り、それが一人であっても、極端な話、相手が猫であっても、チェロを弾き続けようと改めて思った。

この終演後のお見送り、ブルーダル基金を募る為に始った事ではあったけど、僕はそんな方々一人一人と時間が許す限り「有り難うございました」とお礼を言いたい。
その時、帰って行かれる方々がいるから僕らは演奏出来る訳だから。