ある猫の死

13年前。
ある日突然現れた猫がいた。
どの猫ちゃんよりも餌に対して貪欲で、もの凄い勢いで食べる猫だった。今は家猫になったクロという猫の子供達5匹の輪に突如入って来た、ただ一匹のしっぽの短い猫だった。よって「タン」と名付けた。
そのクロを始め、5匹の子供達同様、すぐに去勢手術も受けさせた。

その食欲に比例する様にどんどん大きくなってどちらかと言えばコロコロと太って行った。
人懐っこく、甘えん坊のその「タン」は家の中にも入る様になり、そうこうしているうちに寝るときは必ず家の中だったし、毎日家で食事をしていた。

クロの子供達の5匹は一匹ずつ何処かに独立したのだろう、突如姿を消して行った。ここ数年は家にはクロが女王様として過ごしていて、出たり入ったりするのがクロの息子の「ピク」と「タン」の2匹、そして入って来ないけど毎日食事に来て甘えて行く「ミク」という4匹になっていた。その「ミク」が突如姿を消した。でも半年ぶりに2度ほど突然現れたりしていたけど、今はまた行方不明中。

「タン」は昔から「ピク」の舎弟だった。いっつもひっついて行動していた。
猫には珍しいとも思うけど、「ピク」がいれば必ず後から「タン」が歩いて来た。
そんなコロコロしてた「タン」が2年ほど前だったと思う、口の中が炎症をおこして、人間で言うと口内炎の酷い感じだろうか、食事を食べる時にとても痛がってあまり食べなくなってしまった。あれだけ食いしん坊の「タン」があまり食べないのは凄く心配した。
次第に痩せていったけど、何処かでも食事をもらっていたんだろうし、たまに帰ってくるとミルクや食事はあげていた。
基本、その口内炎以外はとても元気そうだった。

一週間前も玄関にいたからミルクと餌をあげたら意外にも良く食べていた。
その次の日から僕は東京を離れ関西に行っていて、昨夜帰京した。
そして今日朝仕事に行こうと車を出したら「タン」が寝ているのが見えた。
でもいつもは車のエンジンの音で一瞬にして逃げていくのにおかしいと思って近寄って頭をなぜてみたら冷たかった。

時間が兎に角なかったから「タン」を残して仕事に行った。



仕事から戻り、荼毘に付した。
小さな骨壺が今家にある。


良くぞ最後の力を振り絞っていつも最近の遊び場で寝床だった駐車場の車の下まで来てくれた。よくぞ、旅から帰って来るま頑張って生きててくれた。
この2年間は大好きだった食事がままならず辛かっただろうけど、これでもう天国では昔の様にガツガツ食べれるな。

でもまさに眠っていると言う表情だったから、頑張って今日まで、駐車場までじゃなかったのかも知れない。近所の方が昨日の朝も餌をあげてくれて食べていたようだから、ちょっといつもの所で眠ってと思って眠りについただけかも知れない。

多くの想い出と幸せをくれて「タン」は旅立った。

君のアニキの「ピク」は風邪気味だけど元気だぞ。
よく喧嘩したクロもいつもの椅子で寝てるぞ。

ありがとうな「タン」。
13歳だから、結構君はいい歳になってたんだよな。
ずっとガキだと思ってたよ。

ありがとう。それしか無いよ。