2つの嬉しい話

先日のすみだトリフォニーホールでのコンサートには雨にもかかわらず多くの方に来て頂き、こんな所ではありますが、感謝の気持ちを伝えたいと思います。
本当に有り難うございました。


そのお客様の中にかつて中央大学のオーケストラに所属してチェロを弾いていた生徒さんというのか、お弟子さんと言うのか、まあ今や友人達だけど、彼らも集団で聴きに来てくれた。それも東京以外で就職している人も含めて忙しい中、わざわざ聴きに来てくれた。それだけでも十分嬉しい。
彼らは去年から1年に数回東京に集まり、チェロアンサンブルを練習している。
彼らはフラフラとチェロだけを弾いている僕には想像出来ないちゃんとした仕事をしながら、さらにチェロを続けてくれている事が僕には凄く嬉しいし、今回などはコンサート当時にわざわざすみだトリフォニーホールの練習室を借りてチェロアンサンブルの練習をしてからコンサートを聴きに来てくれたと言うのは泣かせる話だ。
僕はたまに中央大学のオーケストラに顔を出す程度でとても「先生」と言われる資格も無ければ、ちゃんとチェロを教えた訳でもない。でもああやって来てくれてチェロを続けてくれる姿を見ると音楽を愛する人間の仲間として純粋に嬉しかった。これからも続けて欲しいし、たまには仲間に混ぜてもらおうと思ってる。


あまり名前を出すのもどうかと思うけど、「アプリコシンフォニーオーケストラ」というアマチュアのオーケストラが東京にある。そこにも何度も伺った事があり、そのオーケストラのチェロの男女の2人が聴きに来てくれていた。
その男性の方が「先生、実は結婚したんです」と言うので「お、それはおめでとう。で、どなたと?」と聞くと彼は「彼女です」と一緒に来てくれた同じオーケストラのチェロ弾きの女性を見た。
「なんだそうだったんだ、それはおめでとう!」
と言うと彼はこう言った。
「実は丁度2年前になりますけど、先生が神奈川フィルの定期演奏会R.シュトラウスドン・キホーテのソロを弾かれた日にプロポーズしたんです。それで結婚して今に至ります」と。
くーぅ。泣かせるじゃないか。
まさかあのドン・キホーテが酷過ぎて、胸くそが悪くなりヤケクソになって彼女がついついOKしてしまったと言う事はないと信じたいけど、あのお二人の縁が繋がった日に彼らが聴きに行ったコンサートでチェロを弾いていたと言う事は、直接僕は関係ないとは言え、嬉しいものだ。彼も本当に誠実な男でチェロに対しても当然真剣で、よく練習し音楽をこよなく愛する同志だ。是非彼女を幸せにしてあげて欲しいと思う。おめでとう。


当然、こうやってここに書いた人達のみならず、本当に多くのコンサートに来て下さる方々に僕は支えられている。どんなに練習しても、どんな名曲を弾いても、その方々がコンサートに来て頂けなければ何も意味がない。
そして、そんな方々にもそれぞれの人生がある。
その皆様の人生の中で一瞬でもコンサートによって少しでも安らげる時間になるお手伝いができるならば、やっぱり身をすり減らしてでも頑張らなきゃと思う。
それが僕の人生だと思う。