宮崎国際音楽祭 2

我が国にはもちろん多くのカルテットが存在するし、活動を続けている素晴らしいカルテットもある。
僕が思うにその日本人によるカルテットの頂点に君臨するのが「東京カルテット」だと思う。思うと言うか、そんな事をわざわざここに書く事すら失礼な事でもある。
今年、その東京カルテットは解散するという。
残念だけど、重い決断をされた事にも凄みを感じる。

その創設時のメンバーでチェロの原田禎夫さんと今宮崎でご一緒させて頂いている。禎夫さんに初めてお会いしたのはチェロアンサンブルでロシア、フィンランドを演奏旅行した時だ。
もう15年ぐらい前になると思う。
罪と罰」にまつわるゆかりの家や土地を二人で訪れた事を最近のことのように覚えている。

その時から僕は彼が話す事にいちいち興味を持ったし、いろんな話を聞くのがその時から好きだった。もちろん演奏は言うに及ばず、素晴らしい音楽家としての禎夫さんを当然のように心から尊敬している。

1967年頃にアメリカに渡ってからの彼の自伝的物語は本当に面白い。
それに禎夫さんは毎回本当の事を語っているのか、果てしないジョークなのか、見破るのが難しい。そして常に世の中を斜めに見ながらすべての事を斬りまくるその言動に僕はすっかり虜になっている。

アメリカなんてあんな酷い国はない。そもそもコーヒーを紙コップで飲ませる国の文化なんてろくなもんじゃない」と言いつつも最後の晩餐は「チーズバーガー」というように、毎日会話の落としどころが読めない。

そんな禎夫さんに相も変わらず翻弄されながら過ごす時間は僕には夢のようでもある。そんな禎夫さんを僕は尊敬と畏敬の念を込めて「チェロ界の高田純二」と呼ばせてもらっている。