旅の効能

やっぱり仕事柄旅が多い。
多くの旅の仕事は現地に着くやいなやゲネプロをして演奏会。
そして翌日朝に帰宅。
日曜日や土曜日の様にコンサート自体が昼間にあると、福岡、札幌など飛行機の運行が多い場所は日帰りが可能になってしまう。こうなると旅とも言えない。
なので旅と言っても空港やホールには詳しくなってもその現地での人との交流や食べ物や景色を堪能するという事は意外に少ない。


その中でも音楽祭は短くても一週間、長いとサイトウキネン・フェスティバルの様に1ヶ月その場所に滞在する事もある。
そうすると自分なりの生活のリズムも出来て来るし、その土地を舐め尽くす事が出来る。

8日まで天空の森音楽祭に参加した。
5日間程だったけど、鹿児島の空気を吸うには十分だった。
もちろん天空の森は霧島市にあるので、鹿児島全てを堪能する時間はなかったけれど素敵な時間だった。
滞在は田島本館という湯治場。
これがまた昭和40年代に生まれた僕としてはたまらないノスタルジーをそそる温泉で、全くもって満足した。


今年で4回目とまだ始ったばかりだけど、小規模ながら地元のお客様との交流に置いては理想的なコンサートであった。
今年からは地元の子供さんたちへの講習会も本格化してきた。第5回目の来年も楽しみだ。


やっぱりいつもとは違う異空間に何日か滞在すると頭の中のリセット、精神的なリフレッシュなど精神的に弱く、ノミの心臓で気が小さい僕には有り難い時間になる。

10年ぐらい前までは自然の中も良いけど、やっぱり都会のど真ん中は気分が楽だなんて思っていたけど、今から考えると粋がっていただけの様な気がする。
今も都会のど真ん中は嫌いではないけど、自然の木々に囲まれ、自然の空気を吸い、普通の時間の流れに身を任せる事が僕には必要だ。


今日、オーケストラの練習に行き、桜ももう終わりに近づいているとは言え、咲き誇る桜を一人でしばらく眺めていたけど、自然に癒されたというより、自然に教えられた気がした。そして僕の座右の銘は「明日が人生で1番良い演奏」というものであったけど、その上に「我が人生、桜の木の様に」という物が加わった。