今日、名古屋に雪が降ったそうな。
「3月に名古屋で雪が降るのは何十何年ぶりです」とニュースにもなっていた。
その正確な年数は忘れてしまったが、僕はその時の雪を覚えている。

僕の浪人が決定した3月だ。
あの時の無力感は相当なものだったな。
体育大学を一瞬目指していた僕が突如音楽大学を目指した訳だし、そんな甘くはないとわかった上での玉砕ではあったけど、やっぱりそれが現実になると力が抜けたしショックだったなぁ。

この1年何をしてれば良いんだ?と。

後から考えれば、その1年はチェロやソルフェージュ音楽理論に没頭しろよと当然の様に思えるけど、その時は途方に暮れた。1年の長さを想像した時、愕然としたものだ。
現在はあまりに1年が早いし、何かに追われて逃亡犯の様な気持ちでいるから「1年お前休め!」と神様の命令があるのなら「かしこまりました」と笑顔で言えると思うけど、当時は1年はたまらなく長いと思ったな。

その愕然、憔悴、展望がない時に雪が降ったのよ。積もったよ、それはそれは。
よく覚えてる。
高校時代に新田次郎筒井康隆という両巨匠の本を読破した。もちろん筒井康隆はその後も書いて断筆宣言などを経て今も書いてらっしゃるが、新田次郎さんは僕が彼の山の小説にハマって夢中になっている時に亡くなられた。
その雪が積もったのを見て冬山でも登ってみたいなと思った事を覚えている。
山登りなんてした事なかったし、冬山なんて行ける筈もなかったけど、登ってみたくなったな。当然行く事はなかった。
で、何かしなきゃと思い立ったのが、毎日ラジオを聴いて日本中の気象図を書く事だった。「富士山、風力6、晴れ、気温摂氏マイナス15度」みたいな事を言うラジオの番組があったのよ。今も多分あると思うけど、それを毎日書き込んでいた。

意外に僕は変わっているな。
今、いろいろ思い出していたけど、音楽を職業にしている人達の中でもちょっと変な奴なのかな。まあそれが良かったのか悪かったのかわからないけど、僕には必要な時間だったという事は間違いない。

そんな名古屋で18日にドボルザークのコンチェルトを弾く。