神奈川フィル「巨人」

今朝起きたら、盟友であるコントラバスの池松からメール届いた。
彼は今ニュージーランドのオケの首席をしていて、年に1、2度日本に帰って来る。そして彼は昨夜、弟子である神奈川フィルの首席コントラバス奏者の米長くんの「巨人」のソロを聴きに来ていた。

その米長くんのソロは素晴らしいもので、そうそうあんな素晴らしい演奏には巡り合えないのではと思うぐらい素晴らしい演奏だった。
リハーサルからいい感じだなと思ってはいたけど、断トツで本番が1番素晴らしいかった。それが凄い事なんですよね。そう出来る事ではないな。
立派だったなぁ。

そんな米長くんを誉め讃える文章から彼のメールは始った。
ここまで池松が誉めるなんてと思うぐらいの絶賛。
僕もオーケストラに携わる年数が長くなり、いくらオーケストラの中でのソロがどれほど恐ろしいものか理解できるとはいえ、やはり「巨人」の恐怖の中であのソロのフレーズを弾く事の難しさはその経験を幾度となくして来た人間にしかわからない。
だからそれを何度もくぐり抜けてきた池松の米長くんに対しての絶賛は僕も嬉しかったし、重い言葉だった。

そしてその米長くんを誉め讃える部分が終わると、「お前の仕事に関して危惧覚えたから敢えて書く」と書いてあり、巨人の何楽章のこの部分はお前はこう弾いてたけど、、、という厳しい長い文章が続いた。

彼が書いてくれた沢山の事は、すべて納得出来る事だった。
それはいつしか自分の意識がないのにそうなってしまっている事、僕がよかれと思ってやっていた事が裏目に出ている事、ちょっとした仕草まで、それはそれは凄い洞察であり、極上の指摘だった。

誉められればやっぱり嬉しい。
だけど、あそこまでケチョンケチョンに書かれるともっと嬉しい。
去年のサイトウキネンで厳しい言葉をずっと僕に言い続けてくれた矢部くんもそうだけど、これだけの事を言ってくれる友人だからこそ親友であり盟友なんだと思う。
仮に僕が彼らに対して苦言を呈しても彼らはちゃんと耳を傾けてくれると思うし、そんな関係がキャリアを終えるまで続く事を心から切望する。
それにしてもここに添付して読んで頂きたい程のケチョンケチョンぶりである。
ある意味、彼の生徒さんに言うよりも厳しいと思う。


という訳で、明日名古屋でドボルザークのコンチェルトのオケ合わせをした後、京都に行く。そしてその後大阪で別の仕事をして日曜日の夜に東京に戻る。

もう一度この一週間の旅の間にゆっくり考えようと思う。

学生時代からオーケストラや音楽の事を侃々諤々と議論を戦わせて来た盟友の言葉は本当にありがたい。
わざわざ勇気を振り絞って言ってくれた事を「なるほどね」程度で済ませた瞬間に僕の演奏家としてのキャリアは終了する。


ありがとよ、池松。