めりぃ くりすます

長い旅が終了。無事帰京いたしました。

僕は学生時代3人の先生に師事してました。専攻のチェロを故・井上頼豊先生と秋津智承先生。ソナタを山崎伸子先生。
当時、故井上先生は既に80歳になろうかとしていましたが、秋津先生と山崎先生はまだ30歳になったばかりの新進気鋭のチェリストで、レッスンも厳しく、男なのに泣きたくなる日々でした。

僕が今あるのは、もちろん井上先生や室内楽を教えて頂いた多くの先生方や先輩、友人に支えらた事が大きかったのは言うまでもありませんが、秋津先生と山崎先生のあの地獄を這う様な厳しいレッスンがあった事が非常に大きいと思っています。

いつかその事を書こうとは思います。

その秋津先生と愛媛県の砥部オーヴェルジュで2人だけのコンサートをしてきました。砥部オーヴェルジュはいつかこのブログにも書きましたが、僕が思う世界一のシェフがいるリゾートヴィラです。そこで3月にもコンサートをさせて頂きましたが、それをコーディネートしている上甲さんから素晴らしいアーティストを紹介して欲しいと頼まれて、その紹介役をしております。
最初は秋津先生と秋津門下のチェロカルテットを考えていたのですが、やはりなかなか予定が合わず、デュオという事に。

僕にしてみれば僕だってそこそこいい年齢を迎えたと言っても師匠は師匠。
リハーサルからゲネプロ、そして本番に至るまで緊張は持続しっぱなし。
普段はお客様に対して(いい音楽をしたい)(間違えたくない)(いい音を出したい)(いい音程で弾きたい)等々の欲が元になり緊張しているものですが、今回の緊張は『対秋津先生』だけでした。
それは「多少はマシになったでしょうか?」「ひょっとして前よりダメになったでしょうか」というどうしようもない自己中心的な事ばかり。
多少は近づく事が出来たのかとは常に自分に問うているのではありますが、今回改めて師匠の凄さを思い知り、以前目標にしていた師匠はそこには存在せず、違う次元に行っておられました。

そのオーヴェルジュのデュオのコンサートの前、チャペルでバッハの6番を師匠は弾かれたのですが、その音のクオリティ、音楽の円熟度、そして語るバッハを目の当たりにして、感動して物も言えないほどでした。
その直後のデュオのコンサート。
はっきり言って僕は硬直した何も出来ない初心者になってしまいました。

それでもステージに上がる直前までレッスンをして下さった師匠には感謝しています。しかも、今僕が足りない事、なってしまっている部分、そして気付いていない、そして欠落した部分を端的にシンプルに指摘して下さいました。

そもそもあのタイガーウッズですら専属のコーチがいます。
僕に必要ないはずがない。
その為にはやはり僕の学生の頃から知っている師匠の一言は有り難い。

硬直した初心者になってしまったのも、それは力が無いから。
そうなって当然なんです。
新たに教えてもらった課題に愚直に対峙し、1つ1つ階段を登って行きたいと思いました。

でも、愛媛の音楽を愛する方々に、あの様なバッハの6番を演奏する師匠を紹介出来た事は誇りに思っています。

広島、高知、京都、和歌山、名古屋、愛媛、鹿児島、福岡と続いた僕の12月でしたが、僕にとってのクリスマスプレゼントはそれぞれの場所で出会った方々との縁と、師匠の指導でした。

メリィ クリスマス