子供の為のコンサート

定期演奏会、自主公演、そして依頼される公演、それともう一つオーケストラにとって重要なコンサートがあります。それは小学生、中学生の為のコンサート。
正式名称はわかりませんが、「移動音楽教室」と言うんでしょうか。
業界では「おんきょう(音楽教室を略して)」と言われるものです。


文化庁、神奈川県や横浜市相模原市等々、学校公演は意外に数が多いです。
文化庁の公演では全国(去年は九州、一昨年は九州・沖縄など)の小学校や中学校の体育館での演奏ですが、横浜や相模原、神奈川県内はホールに生徒さん達に集まってもらってコンサートを聴いて頂いております。


先日、ツイッター上で僕はこんな事を書きました。全文を掲載します。

「小中学校の生徒さんの為のコンサートで、先生達は『拍手は演奏が終わったらすぐに細かく拍手をしなさい、絶対に話さない」等々コンサート前に生徒さん達におっしゃるけど『良いと思ったら拍手。良くないと思ったら拍手をしなくてもいい』と生徒さん達が素直に感じて判断させる事が本当の教育だと思う」


これが意外にも多くの方から反響を頂き、びっくりしましたが、有り難い話です。
ツイッターの字数では上手く言えなかったので、この場をお借りして補足させて頂きたいと思います。

今現在、その地域や現場によって違いこそあれ、演奏会前に先生方から生徒さんへの諸注意が必ずあります。『拍手は演奏が終わりそうになったら準備をする事。私語は慎む事。拍手は細かく、そして大きく。具合が悪くなったら近くの先生に言いましょう』等々。
演奏する方からすると(これは個人的な意見ですが)、私語をしてても拍手がなくてもいいと思うんです。
どういう事かと申しますと、誰にも何も言われず、先入観もなく生徒さんの感じたままの反応を示して頂きたいという事です。
この「移動音楽教室」が教育の場であるという位置づけであるなら、生徒さん達個人個人が感じて考えて反応する事が教育になるのではないかと思うのです。
そういった感性を子供の頃に是非磨いて欲しいと思いますし、音楽と言う物を先入観なくまずは聴いて頂きたいというのが僕の気持ちです。
相当偏った考えかもしれませんが、マナーは何歳になっても知る事が出来るけど、感性は子供の頃に決まってしまう様な気がして。

数年前、生徒数30人程の小学校で弦楽合奏の演奏を頼まれました。その時先生方に曲目は小学生の耳なじみのある物にしてくれとお願いされましたが、もちろん全部ではありませんが、あえてショスターコービッチや現代の物も入れたプログラムを組みました。
コンサート後のアンケート用紙にはショスターコービッチが1番面白かったと書かれたものが1番多く、結局耳なじみのある曲というのは先生の目線での耳なじみだったのかと思いました。
子供は侮れませんし、手を抜こうもんなら一瞬で見抜かれます。
ヨーヨーマでも山本裕康でも子供にとってはどうでも良い事で、その時面白かったり、楽しかったり、感動したりしたものが良い物だからです。案外1番怖いお客さんは子供達かもしれません。

「おんきょう」で楽器紹介の時、必ずバッハを弾きます。
この中で一人でも「バッハっていいな」「チェロっていいな」と思う生徒さんが出て来て欲しいと思いながら。
それも僕の音楽家としての重要な使命だと思っています。