学ぶと言う事

「40年同僚として付き合うより、1回のゴルフのラウンドの方がその人の本質がわかる」
というスコットランドの格言がある。
その1回でその人の立ち居振る舞いや知性や知識の豊富さに圧倒され、どんなゴルフをしたのかすら覚えていない事が10年以上前にあった。
ご一緒させて頂いたその方は児玉清さんだった。
ある時コンサートの司会をされて、その時ゴルフの話をさせて頂いた。
今度一緒にゴルフしましょうとおっしゃられたけど、それは社交辞令的な言葉だと思っていた。数ヶ月たったある日、事務所の方からお電話を頂き、ご一緒させて頂いた。

自然と音楽の話が中心となったけど、それはそれは博学、ウィットに満ちあふれた会話だった。あの生き様や、生きて来た懐の深さや人間の大きさや深さを持ったダンディズムに憧れたし、今でも目指したいと思っている。
心よりご冥福をお祈りいたします。



人間、生きて来た時間が育んだその人の深さやスマートさ、会話から迸る正直な一言が僕に心地いい時間になっている。虚栄も自慢もないその言葉は時間を忘れる。
宮崎でほぼ毎日、朝、昼と食事をしたのが「みるくハウス」という劇場の近くの喫茶店。もう今の場所に店を開いて31年という。そのマスターとの会話がその心地いい時間だった。食事も美味しい事はもちろんだけど、その時間を求めて僕は通った。
そして言葉の端々から多くの事を教えられた。
感謝してもしきれない。

宮崎で行くお店はほぼ決まっていて、朝昼は「みるくハウス」、夜は串あげの「串ぼうず」、メニューが豊富で全て美味しく安い居酒屋「うしたに」、鉄板焼きの「やじきた」のルーティーン。
美味しいのは当たり前で、それを凌駕する店主達の会話が僕には必要で、足繁く通う理由の大きな柱だったんだと思う。

児玉清さんのようなダンディで知性あふれる大人にはなれないかも知れないけど、人生のベテラン、良い仕事をされている方々の一言から多くの事を学んで目指したいものです。それにはその方々の素晴らしさを見抜く力が必要なのは言う間でもありませから、まずはその力を養いたい。
宮崎でその深い言葉の数々を来年まで聞く事ができない事が今の僕の寂しさの根幹を成している。

明日からは大阪、名古屋、そしてバッハ、マーラーの9番と続くが、何故か今は彼らから与えられた言葉の数々のおかげで気持ちに余裕がある。
いい時間にしたいと思う。