マーラーの5番

「5番」と言えばベートーベンの「運命」。
音楽以外ではマリリン・モンローが愛用した香水の「シャネルの5番」。

ショスターコービッチの5番のシンフォニー「革命」、メンデルスゾーンの5番は「宗教改革」と名曲ぞろい。
ブルックナーの5番のシンフォニー、プロコフエフの1番人気のシンフォニーの5番、そして今日定期演奏会で演奏したマーラーの5番も名曲中の名曲。
でも残念ながらブラームスシューマンも5番は書く事無く亡くなっている。

やはりベートーベンの5番以降、作曲家は5つ目のシンフォニーを書くときはこの「運命」がどうしても運命的につきまとっている様に思える。
マーラーも運命的につきまとうどころの騒ぎではなく、テーマも同じリズムだし、あえてマーラーの「運命」を書こうとしたような気すらします。
ベートーベンのチェロソナタの5番のモチーフまで使うほど、5という数字の呪縛を自分で作り上げている。

マーラーはベートーベンが9つしかシンフォニーを書けなかった事の呪縛を自分に投影させ、9つ目のシンフォニーを「大地の歌」とした。あえて死ぬのを恐れて9番とつけなかった。所がその後に9番を書いて亡くなった。10番というのも少しは残っているけども当然未完でした。

自分ではボヘミア人と言っていたらしいけど、ユダヤ人でドイツ語を話し、ウィーンに住み、そしてほとんどは旅の連続の生活だったらしい「異邦人」マーラーが残してくれた5番のシンフォニー、僕は4回か5回目ぐらいであまり演奏の経験はない。でもようやく今日の演奏会で、少しだけこの曲の魅力に触れた気がしている。惜別と涙を流しながら大笑いしているようなこの曲(これは僕だけの印象ですが)、僕は最後に本当の人間としての高揚感と最大喜びの絶頂に行き着いた曲とはどうしても思えないんです。
とはいえ、今回はチェロのパートを練習することもさることながら、寝る前だったり、飛行機の中、新幹線の中、かならず30分はこのマーラーの5番のスコアを眺める事をしていた。作曲家や指揮者の様に全ての音がスコアを見て頭の中で響く訳でもないけど、兎に角スコアを見た。
マーラーの関連する本、昔読み飛ばした本なども読み返したりした。

今回の5番にそれらの僕のチェロ以外の脱線が何の意味を成したのか疑問だけど、今後に毎月訪れる6番、7番、9番に何かと肥やしになれば良いと思います。
7番は過去1回しか弾いた事ありませんし。

今日の定期演奏会は満席だったし、いい演奏会だったと思います。いい演奏をした次が怖いんだよなぁ。
沢山の方々からこれから我々は資金的にも精神的にも助けて頂く事になりますが、僕たちは、ひたすら個人を磨き、そして目の前にある曲に全身全霊で立ち向かうのみです。


なにとぞよろしくお願いいたします。