大事な曲

好きな曲は当たり前だけど数え切れない。
でもその中でも特別な曲というものがやはり存在して、いつ聴いてもそれらはやっぱり僕には特別な曲。

無人島に持って行く一枚のCDは?」
「最後の晩餐に聴く曲は?」
「最後に弾きたい曲は?」
「指揮者でデビューするならプログラムは?」

等々、よく昔から友達とはそんな話をしたなぁ。
それが人それぞれ違うから面白い。

モーツァルト ピアノ協奏曲27番変ロ長調

「もしもピアノが弾けてコンチェルトを弾がせてくれるなら?」
という誰も聞いてくれない質問の僕の答えがこの曲。
学生時代から始まり、割と最近も友人とはこの曲については散々議論した。
ああでもない、こうでもないと。でも最後は「究極の美」である事でお互い納得する。そうでもしないと議論はエンドレス。

弦楽器奏者には変ロ長調という調性はちょっと特別な調性でもある。
第3音、つまり変ロ長調だから「シ♭・レ・ファ」の『レ』の音が開放弦(何も指で押さえない音)である為に『シ♭』の音程のとり方が人によってかなりの差が開いてしまう調性なんです。音程の話はここで止めよう。朝まで書く事になる。

曲の冒頭、チェロは「シ♭」の四分音符で始る。その音程感、テンポによっての弓の使う量、弓のスピード等々、考えて実行しなきゃいけない事が山ほどある。
そこまで多くはこの曲を演奏した事はないけど、学生時代古楽器のオーケストラでこの曲を弾いた事がある。現在の様なスチールの弦ではなくガット(羊の腸)弦で、弓もバロックの弓、さらにピッチも半音までいかないけれど低い。だから弦楽器にしてみれば弦を張る張力が弱い為に、なんとも言えない豊かな変ロ長調にだったのを強烈に覚えている。でも今のピッチや今の楽器の特性ではその響きは出ない。古楽器の奏法は全く楽器が違うぐらいテクニックに違いがある。二つも追えないという事もあり、古楽器は断念した。


何はともあれ、大事な曲だ。
明日のコンサートのプログラムにこの曲が入っている。