有頂天日記 6 In ニューヨーク

吸わなきゃ良いのにホテルの前で極寒の中タバコを吸いに出ると必ず外人さんに声をかけられる。何処から来たのか?観光か仕事か?そしてニューヨークは初めてか?が質問ベスト3。


深夜にタバコ一本を吸うのがやっとと言う寒さの中、ピッツバーグから来たと言うアマチュアトロンボーン吹きに話しかけられた。サイトウキネンを聴きに来たと言う。我らがピッツバーグ交響楽団アメリカでベスト5に入ると力説。ベスト5はどのオーケストラか知ってるかと聞かれたのでニューヨーク、シカゴ、クリーブランド、、、、と5つ言ってしまった後にピッツバーグを言わなかった事に気付いた。彼は臆する事なく、今のベスト5はそうだ、ピッツバーグは今6番目だという。
可愛いいおっさんだ。
その後も彼の饒舌は続き、ショスターコービッチのシンフォニーのトロンボーンの重要性の話は30分に及び、たまりかねてホテルの中で話そうと持ちかけるとさらに優に30分、彼のショスターコービッチ論は続いた。
彼同様、男女を問わず話しかけて来て必ず名前をなのり、友人になれる。この文化は本当に気持ちがいいし羨ましい。


こう見えて案外引っ込み思案で社交性のない僕には、これから日本に帰ったらそう言うキャラクターになろうと決意した。
ここにいるからかも知れないし、英語だから言えるのかも知れないけど、今は何時でも何処でも誰にでも僕は話しかけたがる人間になっている。コミュニケーションがとれると言う事は人間にとってとても嬉しい事なんだとアメリカに教えられた。


でも楽しく話が弾む相手はニューヨークを訪れたアメリカ人である事にも最近気付いた。


スターバックスで混んでいると、カフェラテなどを注文すると必ず「名前は?」と聞かれる。商品を渡す所で取り間違いがないようにするためなんだろうけど、僕は必ず「Hiro」と言う事にしている。そうすると彼らは紙コップに名前を書き込む。
それらしい名前を呼ばれた後に書いてある文字を確認するのだけれど、今まで正しくHiroと書いてあった事の方が圧倒的に少なく、
Ilo、Gilo、Hido、Hiou等々、いかに発音がダメなのかを思い知らされた。でもそこでの「おはよう!元気か?」という店員の感じは好きだな。

いわゆる5番街と言われるストリートで、ブラブラしていると話しかけたがる体質に体質改善しかかった僕を見抜いたのかジャマイカ人に話しかけられて、ニューヨークには何をしに来た?と聞かれたので正直にコンサートだと答えると「俺たちもミュージシャンなをんだよ!名前は?」と言う。
Hiroだと答えるといきなり自分達のCDにHiro!と書いてそれを渡された。しかも2枚も。50ドルと言われたが、持ってないと30ドルを渡し(完全に騙された)と思いながらジャマイカ人達の「ヒーロッ!ヒーロッ!ヒーロッ!」という大合唱の中その場を去る。なんでこんな時だけ「Hiro」の発音が正しく伝わるんだよ。
でも、ラテン系には僕の発音大丈夫なんだとポジティブに受けとることにした。
僕の発音が通じる人種を見つける為なら30ドルなんて安いもんだ。