心模様

ドン・キホーテを弾いた日から、今日のブラームスのドッペルコンチェルトまでの僕の心の移り変わりを紹介したと思います。


ドン・キホーテの本番の日は前日から身体に力が入らず、気持ち悪く、当日に至っては身体がフワフワ浮いている感じなのに身体が重くて仕方ない。そして常に吐き気。本番が終わると僕はこう確信した。
「これだけの想いをしたのだから、個人の責任で済むブラームスはかなり脱力も出来るし、上手く行くと思う」

次の日からブラームスを練習し始めてちょっと何か違和感を覚える。ブラームスは半年前に本番をしている筈だし、昨日まであれだけハードな曲を弾いていたのにもかかわらず、思う様に指がコントロール出来ない。

わかった。当たり前だけどブラームスリヒャルト・シュトラウスの音楽は全く違う事に気付く。そしてもっとシンプルに頭をまず修正しないといけない。ゆっくりと練習してひたすら修行僧のような練習を行なう。

共演の弟とリハーサルをして、本気モードで弾いてみたけど、まだ全然手に馴染んでない事が白日の下に晒される。俄然焦り出す。焦れば焦る程技術も音楽もフォームが崩れて行く。

今回はフォームが崩れてもいいか、と自分に対して非常に甘くなる。

でもやっぱりダメだ、焦る自分を無視して、やはりコツコツとシンプルな練習をする。
そうそう、これこれ、この落ち着いた練習がやっぱりベストだぜ!

また突然焦り狂って、好き放題に弾いてみたりする。共演するアンサンブル・エネルジコの方々の冷笑や失笑が目に浮かぶ。いけませんいけません、まともなブラームスをやはり目指す。再びコツコツ。少し手に馴染んで来た感じがある。いいぞいいぞ。この調子だ。
後は脱力だ。

本番2日前、症状はドン・キホーテの時と同じ。あの豪語は何処に行った?
身体が重く、練習していても力みまくる。自分を恨む。

本番前日、新幹線で名古屋に行き、割とすぐオーケストラとのリハーサル。やはり移動や疲れるもので、いつもの実力が出ないというより、力む体力が半減していて、意外にいい結果を生む。オーケストラの方々も凄く曲を良く勉強されていて、なんだか励まされる。

今日。ゲネプロも終わり、後は練習しまくってやや疲れ気味にしておく。そして直前はゆっくりゆっくり練習。先週よりかなり落ち着きがあるのではないかと誤解する。

本番はいい曲である事を感じながら弾く事ができた。ホールが800人のキャパシティと言う事もあり、力む必要性がない事も味方したと思う。
そして、10月3日に再度あるブラームスはもう大丈夫だとまったく懲りずに思う。


コンサート前になると大丈夫な筈は絶対ない事も立証出来た一週間だった。


アンサンブル・エネルジコ、名古屋大学の卒業生が主体のオーケストラ。いいオーケストラだったな。新幹線の時間があった為に長く打ち上げにはいられなかったけど、もっといろいろお話もしたかったです。指揮者の加藤さん、エネルジコの皆さん、どうも有り難うございました。