夏が終わる

猛暑、酷暑と言われた夏もリヒャルト・シュトラウスと共にどうやら終わりそうです。
サロメ」に「ドン・キホーテ」、共に難曲至極、そして名曲中の名曲だったなぁ。
リヒャルト・シュトラウスの神々まで陶酔させられる程のハーモニーが織りなす絵画とも明日で取り敢えずしばしの別れかと思うと非常に寂しい限り。


作曲者は、「ドン・キホーテ」と「英雄の生涯」は対になった作品で、「ドン・キホーテ」「英雄の生涯」を一晩のコンサートで演奏して欲しいと言っていたらしく、実際その順番で演奏もされたそうです。「ドン・キホーテ」では自分のこれから挑む夢追い人の自分を描き、そして「英雄の生涯」では自叙伝を描いた。それらは、ある筈のない魔法の様な転調と管弦楽法によって書かれ、その圧倒的な筆力に僕は昔から振り回され続け、リヒャル党という政党から立候補する事がドン・キホーテになれる早道かと思った程。


僕にも夢がない訳じゃない。
これからどんな戦いに挑んで行くのかもわからないけど、結局、戦う相手は自分という事でしょうか。戦う相手は人では無く自分。これが整理できただけでもこの夏に「ドン・キホーテ」に挑ませてもらった事に感謝します。
本来なら、オーケストラの定期コンサートで「ドン・キホーテ」を演奏するなら、素晴らしいソリストチェリストに来てもらう事が多い。でもこういう機会を与えてくれた常任指揮者の聖響さん、事務局のみなさん、そしてそれを許可してくれた神奈川フィルのメンバー全員に有り難うと言いたい。


明日は、この曲の魅力である耳や頭がよじれる程の美し過ぎる転調とハーモニーをステージの上で少しでも楽しめる事が出来たら、それが僕の1番近い未来の小さな夢です。
今日だけはその夢を追いたいと思います。