辛い日

8月31日という文字を見たり聞いたりするだけで、切なく寂しく、そして不安に襲われる。


夏休みが終わるこの日、宿題が終わっていても終わっていなくても、毎年僕は夏休みが始まった7月の後半の頃にどうにかして時計を戻したい気分でいっぱいだった。


もちろん熱中症なんていう物は知らず、炎天下で野球をしていたし、すぐ近所にある二子山古墳の茂みの中での原始人ごっこの楽しさは、今のゴルフの比じゃない。
ハイライトは近くの神社の夏祭り。その時に特別に支給された300円のお小遣いをどうやって使うを小さな脳みそをフル稼働させ、吟味に吟味を重ねた結果「りんご飴」という物を買って、金魚すくいをして、余ったお金は内緒で机の引き出しに隠して蓄財に励んだ。
300円は使い切ったと両親に申告していたから、今で言う「空出張」みたいなものだ。
そのお金は一体どこに行ってしまったんだろう。


盆踊り会場の周辺で、真っ暗の中「忍者ごっこ」に熱中していた。あの聴こえて来る太鼓や音楽があったからこそ安心して真っ暗の中を探検出来た気がする。
チェロを始めてからは教室の合宿に行く様にもなった。

そうやって夏休みは過ぎて行った。
そして例の8月31日が来る。


働き出してからと言うもの、夏休みらしい夏休みを取る事は一切ないし、ずっと夏の間働いて来たのにもかかわらず、8月31日になると(終わるなぁ)と寂しく切ない気分になる事はずっと続いている。

今日も、なんか寂しく切なく辛い1日という感が拭えない1日だった。


携帯もパソコンもゲームも無かったあの時代、やる事がいっぱいあって幸せではあったな。
デザートもスィーツも無く、リンゴ飴で狂喜乱舞していたあの頃に1日で良いから戻ってみたい。