宮崎雑記帖 4 「串ぼうず」

繁華街のど真ん中、そう、宮崎の方ならすぐわかるミスタードーナッツから歩いて30秒ほど、華やかなビルの一階に厳かにひっそりとその「串ぼうず」はある。
その和風の扉を開くとカウンターの席のみ12席が我々をいつも迎えてくれる。
我々を迎えてくれる主人公はここの「串ぼうず」のマスターと妙齢な女将さん。マスターはハンサムにした西郷隆盛と笑顔の招き猫を足して2で割るとそっくりの笑顔と、斜めになってお辞儀をするいつお会いしても本当に気持ちの良い方である。
女将さんはハキハキとそして忙しく動き回る串揚げに集中するマスターを支えるなくてはならない司令塔かとお見受けする。
店は「京風串揚げ」と書いてあり、その京都の串揚げを食べたことがない僕にとってはいかんせん比べる術はない。
でも比べるも何も、とにかく美味であり、串揚げを20本近く食べたとしても揚げ物を食べたなんていう感覚はないほどあっさりとしている。とにかくあっさりと揚げる四季折々の食材の美味しさを堪能させて頂けるこの店は、僕には心身共に幸せを与えてくれる東京を含め全国でも数少ない隠れ家的存在である。
蟹の爪に紫蘇と海苔を巻いて揚げてあったり、みょうがに海老が巻いてあったり、甘くて旨くての新玉葱、鶉の玉子とハム、餅と明太子等々、書いたらきりがないのでこれぐらいで止めるが、一度足を運ばれる事をお勧めする。

美味しいという事はさておき、僕はどんなに忙しくても同じルーティーンで行われているあのマスターの仕事の丁寧さや、何重にも手間をかけた細かい愛情、そしてどんなくだらないボケを我々が言ってもすぐにそれに乗っかってくれてさらに発展させてくれる頭の良さとあの笑顔には、尊敬と感謝しかない。
土曜日に予約を入れようと思ったら予約で満席となっていて、「じゃあまた来週にでも」と言いかけたら「明日の日曜日に店開けますから、何時ぐらいとおっしゃってください」と電話で言われた時にはあまりの感動に、防水でない携帯電話を涙で濡らしてしまった。そう日曜日はお店はお休みだが、それはさすがにあまりに悪くて丁重にお断りさせて頂いた。
週に一日のお休みにしっかりと休んで頂き、出来るだけ長くお店を続けて欲しい。

宮崎にフラっと旅に行こうと思ってらっしゃる方は、東国原知事のお勧めの地鶏を食べる前に、この「串ぼうず」に立ち寄って頂きたいと心から思っている。古川と書いた焼酎のボトルがあるのでそれを飲んで頂いても構わない。