始まれば終わる

ベートーベンのソナタ3曲、そしてバリエーション1曲、タフなコンサートでした。
松山の高島屋の中にある「ローズホール」という感じのいい洒落た場所が、僕のベートーベンのソナタと変奏曲の4曲を弾く最初の場所になりました。
今まで使い慣れた楽譜を使わず、この松山から始まるベートーベンの旅のためにエディションも変えて新しくした楽譜での挑戦は、想像していた以上の怖さでした。しかも今までのボーイングやフィンガリングをかなり変えてのチャンレンジだったとは言え、こんなに恐ろしく、また前やっていたことがここまで体に染み付いているとは、甘く見てました。
散々練習もしたし、ピアノの林さんともリハーサルも結構好調で、意外に違う楽譜でも大丈夫だなと思っていましたが、やはり人前で演奏するという事は、普通の事ではない事を思い知りました。頭で解っていても、いざ腕や指がその通りに動かない、前記憶していた事を自動的にやってしまいそうになる。違う違うと心で叫びながら以前の指で弾いたり、以前のボーイングで弾いてしまった部分は数え切れず。情けない。


というか、「暗譜すればいいだろ」とみなさんに言われそうですが、その通りでございます。


ベートーベン3曲のソナタを一晩で弾いた経験はありませんでしたが、苦しかった。
リハーサルをしていると、これほど幸せな事はないと思うのですが、苦しかった。
プールに潜り、息継ぎなしで50メートルを潜水する様な苦しさがありました。


終演後、暫く立てませんでしたから。
とは言うものの、ものすごいたくさんの課題が分かった。これは本当にいい経験をさせてもらったと今は心身ともにヘトヘトですが、嬉しかった。


次の四国中央市での公演はもちろん、残りの愛媛での公演や北九州での公演で今日獲得できた課題を少しでも克服できたらと思う。
上手くいかなかった部分も沢山あったけど、だから次を目指せると本気で思った僕にとっては最高の一日となりました。

バッハの無伴奏からずっと応援してくれて僕のやりたいコンサートをやらせてくれて、そして何から何までお世話になっている「楽友協会えひめ」のみなさま、ありがとうございました。言葉では「ありがとうございました」しか感謝の言葉がないんですよね。


こんなタフで辛いコンサートも始まれば終わるけれど、でかい獲物を掴んだ喜びは大きいぞ。