イザイの無伴奏チェロソナタ

ちまちま、こつこつとイザイの無伴奏チェロソナタを練習してきた。悩んで苦しんで全く気分が晴れる事なくコンサートに突入しそうだ。
冷静に考えればコンサートで弾く曲はいつもそうだなぁ。気分良く「よし!行くぜ」なんて言う時はない。一度もない。

これまで1900年代に書かれた曲を僕はすごく敬遠してきた。1度リサイタルでレーガーの無伴奏の2番とヴェーベルンの3つの小品というのを取り上げたぐらいかな。
後はシュニトケチェロソナタをこれまた15年ほど前に弾いたぐらい。
友人達に耳が良くないと言われるだけあって、近現代の作品のハーモニーをちゃんと捉えるのに凄く時間がかかるし、最後までなんのハーモニーが鳴っているのかわからないままコンサートで弾いたりしていて、段々自分から避けて行った気がする。
シュニトケソナタは良い曲だと思ったけど、なにせ僕には難しかったな。
一昨日、みなとみらいホールでの演奏会の時、昔からお世話になっている東京コンサーツのマネージャーの方にお会いした。すごく久しぶりで、お互い「お元気でしたか?」という挨拶からちょっとした昔話に花が咲いた。
彼は
「昔、裕康さんがサントリーホールシュニトケソナタを弾いた時の事が忘れられないなぁ」
と言う。内心(そんな良い演奏したかな俺?へへへへへっ)とちょっとばかしウキッとしけれど、冷静を装って「どんな演奏でしたか?」と一応聞いてみた。
そしたら彼は
「裕康さんが舞台に出て行く時に『演奏は諦めた、お辞儀だけは完璧にしてきます。見ててくださいよ』と言い残してステージに出て行ったんですよ。あれは忘れられないですよ」
と言っていた。
(ふんふん。そんな事だったか。でも人の記憶に残る事は大事大事)
だから段々近現代から遠ざかったんだよな。
でも、また今回イザイの無伴奏というチャレンジする機会を頂いた。
それが今週の12日のリリスホールなんですけど、そればかりに気を取られていて、先日石田くんとリハーサルをするまでモーツアルトのバイオリンとチェロの為のデュオを2曲も弾く事を失念していたぞ。
ラストスパートと行きたい所だけど、明日明後日と再び名古屋。第九であります。今年初の第九。名古屋でこっそりラストスパートかけます。お辞儀の練習もしとくか。