ドビッシーという人

先日ショスターコービッチの事を書きましたが、忘れていました。ドビッシーと言う人。今回の定期演奏会ではドビッシーの「海」という曲を演奏する訳ですが、なんという曲を書くんだと改めて感動している次第です。イタリアで勉強している時に友達の家に食事を招かれて、と言ってもめちゃくちゃシンプルなアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノだけでしたが、その時に好きな作曲家は?と聞かれ、「ドビッシー」と答えました。しかし、みんなは「そんな作曲家は知らない」と言うじゃありませんか。「フランス人でドビッシー、デブシー、デビュシィ、デビュッシー、」とあらゆる発音で言いましたが通じません。
「海を書いたフランス人」と言ってもsea(海)と必死に言うのですが、イタリア人のYes はSi (シー)ですので、余計に混乱を生じ、親切なイタリア人達も、「そういう作曲家がいるんだね」と言う事で終わりそうになった時に「月の光」を歌ったら全てのイタリア人が「なんだディブスィかぁ」とようやくわかってもらえたのでした。ディブスィという発音は僕がそう聞こえただけで、きっと正しくないと思います。
彼の書いた管弦楽曲チェロソナタ、バイオリンソナタ、もちろん月の光も本当に信じられない名曲です。どんな耳をしていたのか、あまりの響きの芳醇さにはめまいがする程です。大学を卒業してしばらく、何かを弾いてくれと頼まれたらコンサートでも結婚式でも、どんな時でもドビッシーのチェロソナタを弾いて悦に入っていた頃があります。そしてドビッシーは得意だと信じていました。ある時、そのドビッシーを弾いた後、その時の録音を聞いて、あまりの下手くそ加減に嫌気がさして、それ以来封印しております。そしてそれ以来フランス物も不得意だと思い込んでいますので、積極的にフランス物を演奏する事が僕はあまりないのです。
それでフランス料理のお店で演奏するとは失礼千万。
フランス語だって全く話せませんし。
フランスコンプレックス、ここに至れり。