絶対音感・耳の良い悪いとは

正直言って僕は耳が良く無い事が昔からコンプレックスです。僕の友人達は本当に素晴らしい耳を持っています。その素晴らしい耳っていうのはどういう物かと言いますと、例えばオーケストラで10種類以上の楽器が一度に音を出す瞬間が当然ありますが、その中で誰かが音を間違えたとします。その瞬間に、「何かが変だな」ではなく、「あの楽器がミではなく、ミのフラットです」と言える人達の耳の事を言います。よく知ってる曲なら僕も言えますが、知らない曲でも。しかも複雑なハーモニーですら、このハーモニーの中にこの音はあり得ない、しかもこの音に直せば問題が無くなると瞬間に言えてしまう人がいるんです。僕には出来ません。

ところが何故か僕の弟は同じ環境で育ったのにもかかわらずいとも簡単にそれが出来ます。弟だけじゃなく、矢部達哉君もそうです。二人ともそうですが、誰かがメロディーを弾いていると、その曲の伴奏を過剰なハーモニーをつけて伴奏が出来たりします。1度その二人とあと何人かでカラオケに行った事があるのですが、わざわざバイオリンを出して、知っている曲でも知らない曲でも全て伴奏をつけたりオブリガードをつけたりしていました。唖然でした。

この前飲み会でお酒も飲まず僕は調子に乗り「ベートーベンは耳が聴こえなかったからあんな名曲が生まれたんだ!僕のハンディキャップは耳が聴こえる事だ!」と豪語したら、弟が「その程度にしか聴こえない耳は確かにハンディキャップだよな。かわいそうに」とマジにコメント。
矢部くんも「その耳で和声感がある事が理解出来ない」と僕の事を絶賛しています。褒めてねーよ。

昔から彼等の耳には憧れていましたし、どんなに頑張ってもそのレベルになる事は無理みたいです。
僕だって絶対音感がない訳ではないのです。でもゆるーい絶対音感なんですよね。
アメリカのオーケストラでは「ラ(A)」の音は440Hzでチューニングします。日本では442Hz、そしてヨーロッパではもう少し高く444Hzぐらいなんですが、弟はチューナーも使う事無くそれは何Hzなのかわかるそうです。そんな耳になりたかった。しかもなんでわかるのかな?
僕もオーケストラで働いていて、今誰が音程が悪いのかとか、瞬間的に3つか4つの楽器は聴いていられますが、それ以上は難しい。それに沢山の楽器が鳴っているとなんの楽器の音程が良いのか悪いのかはちょっと自信ないです。

指揮者になるには、まずそれが最低限の能力でしょうね。
だから僕は指揮者になる事は一生不可能です。
しょうがないから耳がそこそこ良い振りをしてチェロを弾くしかないんです。
今に見てろよ。耳が良く無くても、素晴らしい音楽をしてやる。