富士山

静岡駅の一つ東京寄りに東静岡という駅があり、そこに船の形をした「グランシップ」という巨大なホールがあります。
宿泊は静岡駅の真ん前でしたが、そのグランシップに3日間通いました。
コンサートではスメタナの「売られた花嫁序曲」、ドボルザークの「新世界」などでしたが、そのホールから一歩外に出ると目の前に富士山が見えました。
中学の時の修学旅行で東京・箱根へ行く時に初めて富士山を見て以来、散々見て来た富士山ですが、あれほどまじまじと長々と富士山を目の前で眺めると言う事は初めてでした。日本が誇れる素晴らしく美しい山だと初めて心からそう思いました。


天気も3日間とも快晴で、しかも冬でしたのでくっきりとその美しい姿を拝見する事が出来ました。
富士山を眺めながら、これを毎日見て生活している人達がいるのかと何かうらやましく思いましたし、この山が当然信仰の対象になり得るんだとという事を強く思いました。いやいや本当に美しく、世界に誇れます。仕事で出会う外国人達が富士山はアメージングだとみんなが言いますが、あれはアメージングです。日本の素晴らしい所は実は当たり前過ぎて気付いていない事が多いのかなとちょいと反省しています。


高校3年生の頃、そして浪人時代、東京にレッスンに通う時、新幹線で何度も富士山を見てきました。
これから僕はどうなるんだろう、音楽大学に入って僕はやっていけるのだろうか、など本当に不安を抱えながら富士山を見て来ました。今では新幹線に乗ればすぐに睡眠に入りますが、当時は寝る事もありませんでしたし、メールを送るなんて事ももちろんありませんでしたから、ひたすら窓の外を眺めて不安な想いに耐えていました。
僕が生まれて死ぬまでの時間なんて、富士山からしてみればほんの一瞬だと思いますが、せめて僕が生きているうちはあの美しい姿でいて欲しいと思います。
アルピニストの野口さんがやっている富士山のゴミを拾う活動に参加したいなと本気で思っています。


これだけオーケストラで長く働いて来て、あの有名なスメタナの「売られた花嫁序曲」を演奏したのは初めてでした。
2年前には「禿げ山の一夜」も初めて演奏しましたし、名曲とされている超メジャーな曲でもまだまだやっていない曲がありそうです。