シェーンベルグ 浄夜

12音技法で知られるシェーンベルグですが、彼の最も有名な曲と言っても言い過ぎではない若き日の作品に「浄夜」があります。
作品4ですからかなり若いときの作品です。
弦楽6重奏の為に書かれていますが、弦楽合奏版もあり、学生時代からこの弦楽合奏版は桐朋学園では本当によく弾かされました。
弾かされましたと書きましたが、その当時は生意気にも「結構いい曲じゃん」なんて豪語しておりました。
それは表面上のメロディやハーモニーの美しさにしか興味を持っていなかった若き日の僕の恥ずかしい姿です。


弦楽合奏版は本当に良く演奏させて頂きました。第1チェロも第2チェロも。
弱冠第2チェロを弾く機会の方が多かった気がしますが、それにしても6重奏で演奏する事より遥かに弦楽合奏版の回数は多かったです。
しかしながら、この曲の調性音楽のギリギリなんだと思ったのは割と最近の話かもしれません。
もうこれでシェーンベルグは12音の音楽に行くしか無かったんだなと最近改めて思います。
詩、あるいは物語を音楽にした事の素晴らしさは言うに及ばず、凝縮度や極限のハーモニー、そして起承転結とたゆみ無く続く緊張したハーモニーの連続とその中にある至極単純なハーモニーの美しさ、僕が何を語ろうと傑作なんでしょう。


明日からこの「浄夜」の6重奏版のリハーサルがあります。
21日に八ヶ岳でこれは演奏されます。今回は第2チェロで第1チェロは苅田雅治さんです。
苅田さんは僕のある意味命の恩人的な方で、プロのオーケストラへの道や他のいろんな仕事に、若くて何もしらない僕を誘って下さいました。そしていろいろと教えて頂きました。本当に感謝してもしきれない恩人の一人です。
苅田さんの教えてらっしゃる生徒さんの合宿のお手伝いにここ10年ほどずっと夏は参加させて頂いております。
そんな苅田さんと6重奏で共演するのは初めてかもしれません。非常に楽しみです。
特に苅田さんは近現代を得意とする素晴らしいチェリストで、バロックから古典、せいぜいロマン派までの僕ですから、またいいツボをもたらして下さるに違いありません。
しかも11月に今度は第1チェロを弾かなくてはなりませんので、盗める所は全部パクってやろうと思っています。


僕はつくづく幸運だと思います。近くにいろんな事を盗める方々がいっぱいいますから。本当に幸運です。