シューマン チェロ協奏曲

今日、ようやくと言ってはいけませんが、シューマンのチェロ協奏曲が終了しました。
実際、緊張もしていたでしょうし、集中もしていたと思われ、どんな演奏をしたかはほとんど覚えていません。
そんな大きなミスは無かったように思いますが、なにせあまり記憶がないので。


シュナイトさんはかなりこの曲のテンポを遅く感じておられて、僕が考えるテンポとは大きな違いがありました。
3日間のリハーサルで出来る限りマエストロのテンポを尊重し、それにアジャストしていく作業は困難を極めましたが、今回それでフッと思った事は、自分の想い通りにならない時に、つまり自分の弾きたい様に出来ない時、実は自分では絶対に作り出せない物が浮き上がって来るのではないかと言う事です。

簡単に言えば自分の個性は、まず自分を消してからしか生まれないのではないか、と言う事です。
今日の僕の演奏が、そうであったかはわかりませんが、いろんなハザードをかいくぐってそこで最善を尽くした時、何か自分では見た事のない物が発見できるのかもしれないと。それが本当の個性なのかもしれないと思いました。


実はこの曲は21年前、日本音楽コンクールの本選会で弾きました。
その時は本選に残れるとも思っておらず、二次予選が終わったあと、ただただ必死に暗譜をしただけで終わりました。だから、今回この曲を練習し始めた時には、初めて演奏する曲じゃないかと思うぐらい、何も覚えていませんでした。
しかも21年前の話ですからね。でもその時1位になって、プロの演奏家になれるんじゃないかと思わせてくれた想い出深い曲です。


実際、オーケストラ生活17年にして1度しかこのシューマンのチェロ協奏曲をオケで伴奏した事ないぐらい、弾くのは言うに及ばず、聴くことも本当に少ない曲ですから、21年後にまた演奏するなんて本当に想像もしてませんでした。だから、
この協奏曲を弾く事が、この先の演奏活動の再スタートになるのかなと思っていました。やはり何かの縁ですからね。
演奏の内容や評価はお客さんに判断して頂く事にしますが、僕はなんとか無事に再スタートが切れた事にとてもホッとしています。それにここ数ヶ月格闘した日々にはすごく充足感があります。


あと21年後と言いますと、60歳を超えますが、どんな演奏家になっているのか、不安でもあり、楽しみでもあります。

いろいろと今日の演奏を支えてくれた神奈川フィルにはとても感謝しております。
そして、凄く沢山のお客様に来て頂き、本当に有り難うございました。