サイトウキネン 1

今年も松本でのこのフェスティバルでのリハーサルや本番に参加させて貰った事を心から嬉しく思うし、誇りにも思う。とは言え、このフェスティバルに来たからいつもと違う仕事をする訳ではない。
ここで普段自分の職場でやっている事を変えて仕事をする事は無意味な事で馬鹿げた事だと思う。
去年のフェスティバルが終わってから、今年のフェスティバルが始まるまで1年間、あらゆる仕事の中で何を考え、何を試み、良い悪いではなくどんな結果を生んでそこから何を得てきたのかがここで出るだけの話。
だから急に頑張っても滑稽なだけだし、それは全ての人にわかってしまう。


確かにいつのもタイミングや奏者が違うから、その擦り合わせはもちろんするし、このサイトウキネンオーケストラで求められる音という引き出しを数多く持っていないと仕事にならないのは当然の話だけど。
と言いながら、その音はどうするのかはこの期間やっぱり悩みに悩む。
ベートーベンの7番の冒頭のA durのコードの1音、これだけでも相当悩む。
隣の上村さんと弓のスピードが違う、木越さんと音の立ち上がりが違う、小澤さんは何を求めてるのか、コンマスの豊嶋さんの弓の切り方はどう、様々な事を思う。

でもそれはいつも思っている事ではある。
ここだから特別に気にしている訳でもなく、神奈川フィルでも京響でもどこでも毎回思っている事。

今年松本に来て6日間は毎日びっしりリハーサルがあったし、オフもなく演奏会2回。それもオネゲル交響曲第3番、ベートーベンの交響曲第7番、そしてマーラー交響曲第2番「復活」とフィジカルもメンタルも疲弊したのは事実。今日が初めてのオフ。
でも、体力的にまだ万全とまでいかない小澤総監督がコンサートで渾身の力を振り絞っての指揮する姿を見ると、なんとも自分の弱さが情けなくなる。
だからなんとかしたくて午前中に4キロ程度のウォーキングをして身体を安定させているような気がするんだよなぁ。気休めなのかもしれない。

とにかく明日、明後日と本番がまた続くので、力む事なくとにかくその瞬間瞬間、最善の仕事ができる事に集中したいな。